「仕事」考
太田公士(6月21日)

 本Webサイトでも紹介させていただいているが、弊社の「事業姿勢」の第二項に、
 …「能力・情熱・考え方」の3要素中で、最も重きを置くのは「考え方」である。能力と情熱に“マイナス”はないが、「考え方」だけには“マイナス”がある。能力と情熱を兼ね備えていても「考え方」がマイナスだと「能力×情熱×考え方」という事業の方程式においてはマイナスの度合いが増すばかりだからである。…
 と記している。これは京都セラミックの稲森和夫会長の「仕事論」である。仕事をする“心根”の重要さを説いたものだが、同氏の著作を読んだとき、なるほど!と合点したので、そのまま失敬して弊社の事業姿勢の一つに加えさせていただいた経緯がある。
 さて、最近G社と新たな取引をさせていただくことになり、初回の打ち合わせにお邪魔したとき壁にかかった「社是」が気になったのでメモをとらせていただいた。曰く、
 『行動を起こせば問題が発生する。それらを解決していくのが「仕事」である。』と。
 本当にそうだな、と思った。仕事は必ずしも順調な時ばかりではない。我々の眼前に何がしかの問題、壁、ハードルが必ずと言っていいほど立ち現われて来る。難問に直面した時、どういう態度で、どんな具体策をもって、どう解決しようとするのか? そのターニングポイントで、どの道を選択するのか。
 かつて某業界紙で新聞記者をやっていた私は、有田焼のある陶工を取材したことがある。その方のお名前は、中村清見(号・清六)さん。現在は日本伝統工芸士会の会長をされている。中村さんはその修行時代に師匠の奥川忠右衛門師(人間国宝)から何度となく怒鳴られ、スリッパの裏で頬をはたかれながらも、その都度「ナニクソ」を出して頑張ったという。中村さんは取材に際し、「あの時、ヤケクソを出していたら今日の私はなかったでしょう」と述懐してくれた。ビジネスの仕事と焼き物の修業とではいささか趣きが異るが、根本のところは同じだと思う。人生や仕事のターニングポイントで問題から逃げず、「ヤケクソ」を出さずに「ナニクソ」の道を選び努力する。これも立派な「仕事論」だと思う。
 私が尊敬するA出版社のI社長は、社是にこう謳っておられる。
 「出版は人や、出版は商売や、出版は人間だ」
 また、同社長の座右の銘とされているのが「営々黙々 花が咲いても 咲かぬでも!」という言葉だ。I社長はこの言葉のままに市場に受け入れられる書を出版することを基本方針にして、しかも黙々と着実に事業を進めておられる。言葉は人を作り、人は言葉によって自らの道を選んで行くものなのかも知れない。
 昨年秋に京都に出張した。打ち合わせの後、先方の案内で飲んだスナックのママがメールマニア。帰京した翌日には早速メールが来て、清水英雄氏の以下のような詩を添付くださった。これも一種の「仕事論(商売論)」だと思う。


            あきない    清水英雄
      商売は あきない という
      どうして あきない なのだろう
      それはおもしろくて しかたないから
      あきない なのだ
      いつも おもしろいから 笑い顔
      笑顔が たえないから 商売は「笑売」となる
      笑顔で いつも活発だから 「勝売」となる
      ところが あきない 商売を
      おもしろくない と思っていると
      その商売は すぐあきる
      いつも 不平不満や愚痴が出て
      心が 次第に傷ついて「傷売」となる
      こんなお店には
      そのうち 誰もよりつかなくなり
      「消売」となって きえてしまう
      「笑売」をしているのか
        「傷売」をしているのか
      「勝売」をしているのか
        「消売」をしているのか
      あなたはどちらの商売を しているのだろう


 人それぞれに仕事に対する考えは十人十色、千差万別だ。さあて、実際のところ、私はどんな考えで仕事に携わっているのだろう。いずれにしても消売や傷売ではなく、笑売・勝売になる道を私は選びたい。長いようで実は星のまたたきほどに短い人生の中で、どれだけの時間を仕事に充てているかを考えただけでも、結論は既に決まっているようなものではないか、と思えてくるのである。





トップに戻る

Copyright (C) 2000 Ladybird Corporation. All Rights Reserved.